罪深き90分の空旅! 「オレのスッチーに何すんだ‼️」受刑者も刑務官もやはりただの「男」《いよいよ帯広刑務所へ》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.5
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月! 府帯広刑務所移送が決まったじんさんは、移送の飛行機のなかで「妄想」爆発。でもそれは共に送られる受刑者たちも彼らを見張る刑務官にも伝染して・・・。
嗚呼! これが悲しくも男の本能。法の前にある人間の自然。心の自由だけは法でも縛ることはできません。いよいよ帯広刑務所へ到着です!
■「この野郎! オレのスッチーに何すんだ!」
安定飛行に入り、安全ベルト解除のアナウンスが流れた。護送任務の担当 の指揮官から、「これから君たちを片手錠にするので、着くまで大人しくしていろ。いいな、わかったか」と囁くような声で告げられ、ボクたちの手は すこしだけ自由になった。
普段、刑務官が塀の中のボクたちを呼ぶときは、決まって横柄な態度で、「お前」と呼ぶのに、このときばかりは「お前たち」から「君たち」に格上げされていた。いくら受刑者であっても、公の場で「お前」と呼ぶのは、さすがに体裁が悪いのだろう。
道中買ってきたというお菓子を、ボクたちはプチ旅行気分の担当たちから、「課長が君たちたちのために買ってくれた物だからありがたくもらえ」と、値打をつけられて供与された。どうせ経費で買った物であることはわかっている。
ボクは内心、この野郎! と思いながらも、菓子袋を開けて中を覗き込んだ。そこにはキャラメルコーンが山吹色に光っていた。
スッチーたちは客の間を飛び交うようにして、忙しく動き回っていた。ボクが目をつけたスッチーは、ボクたちを出迎えてくれたスッチーだ。可憐な顔とは不釣り合いな、強烈なボディ。だが逆に、そこが男どもの視線を釘づけにしてしまうほど、ゾクッとさせるエロチックさを醸し出していた。目当てのスッチーは反対側の通路で乗客の対応に追われていた。
しばらくすると、台車を曳いたスッチーから機内食が配られた。ボクはそのスッチーたちの身体にも何気ない振りをして目を這わせる。
機内食を食べ終わると、ボクは相棒たちのことが気になり、後ろの様子を窺ってみた。早々と食事を終えていた相棒たちは、二人仲良く顔を揃え、少し首をもたげた格好で目を皿のようにして、反対側の通路にその視線をロックオンさせている。
ボクは相棒たちの尋常でない視線が気になり、その視線の先を目で追ってみた。するとそこには、何とボクが目をつけていた件のスッチーが前屈みの姿勢で、豊満なエロいお尻にパンティラインを食い込ませ、乗客に対応している姿があった。
相棒たちはすでに理性がどこかに吹き飛んでしまったのか、スッチーのそのお尻に視線をグサリと突き刺していた。ボクは思わず、「この野郎! オレのスッチーに何すんだ! オレの女のケツを見てんじゃねぇよ、この野郎!」と、自分のことは棚に上げ、心の中で叫んだ。
そして、まるで自分の女が相棒たちに犯されでもしたかのようにへこんでしまい、憂鬱な気分になった。
つまりボクは、何とも救いようのないほどオメデタイ人間だったのである。しかし、この罪深きスッチーのお尻は、ボクたちにとってあまりにも刺激的で、このお尻のためなら平気で人殺しもできるのではと思わせるほど、魅惑的なお尻だった。
件のスッチーは、用事を終えると、反対側の通路から、客たちに気を配りながらだんだんボクたちの座席の方へ近づいて来た。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。